Sさんへの誕生日メッセージ

法政大学文学部教授・小説家(沖縄タイムス新沖縄文学賞選考委員)の中沢けいさんから寄せられたSさんへの誕生日メッセージです。高江の豊かな自然を守れと足を運んでくれた方が、狭い部屋に押し込められて誕生日を迎えるというのも理不尽ですね。中沢さんの思いあふれる手紙が伝わって、1日も早い釈放となりますように!

 

T N様

お誕生日おめでとうございます。 その後、いかがおすごしでしょうか。手の甲の腫れは引きましたか。痛みはまだ続いているのでしょうか。早期に大学病院で受診できるとよいのですけど。心配しております。那覇ではそろそろ避寒桜が咲くころでしょうか。暢気に赤い桜を見物できるとよいのに、残念しごくに感じています。 先日、お目にかかりましたあと、南部戦跡と高江、辺野古へ行ってまいりました。南部戦跡、とりわけ摩文仁の平和記念公園にはこれまで行ったことがなかったので、この機会に足を延ばすことにいたしました。この頃は修学旅行も一定の季節に偏ることなく1年じゅう、どこかの学校の生徒が沖縄を訪れているそうです。摩文仁まで足を延ばした日も、修学旅行の生徒の集団に行きあいました。翌日は高江まで行きました。軍用ヘリ、オスプレイの訓練飛行が繰り返される高江は「空の教習所」といった感じで、考えてみれば当たり前のことですが、どんなパイロットも初めからベテランということはないわけで、最初は初心者なのですね。初心者が上空を飛び回るのはまことに危険だと実感いたしました。初めて低空で飛ぶオスプレイの姿も目にいたしました。 私が初めて沖縄へ行ったのは1981年9月で写真家の東松照明さんの撮影にお一緒させていただいた時でした。高江には空にも地上にも「しじま」と呼べる明るい静けさが満ちていて、東松照明さんとお一緒した時のことをありありと思い出しました。その頃の沖縄本島には高速道路はなく中部の金武まで行くにもかなりの時間を要したものでした。高江から辺野古へ行く途中で、マングローブが美しく茂る水辺がありました。昔、金武の村はずれでみた入り江の様子にそっくりでした。そこは公園になっているそうですが、神奈川県の逗子からきた高校生たちが散歩をしていました。私が那覇へ来る時に同じ飛行機に乗っていた修学旅行の生徒たちでした。 沖縄は冬の雨の季節ですね。避寒桜の咲くころは雨が多いのだそうです。名護には八重岳という避寒桜の名所もあります。避寒桜が終わると海へ降りて漁ができる季節になるそうです。無聊をお慰めする言葉もありませんが、保釈になったら、少しは那覇でも名護でも知っているところがありますから、一献さしあげたいものです。 今日の東京は小雨と雪です。インフルエンザが流行ってます。 どうぞ御身体お大切にお過ごしください。またお便りいたします。

2/9記

 

編注※名前のイニシャル表記の相違は、事情ご賢察下さい。

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